第三節 永い後悔と長い航海
1
焦げたチーズの香りと海老の甘みが口中に広がる。
ああ、なんて幸せなんだろう?
見下ろせば美しいスタジアム。特設されたステージへと集まってくる中高生の女の子達。
台場ブルーパークの展望レストラン『トルトゥーガ』、ぼくはそこにいた。目の前に座っているのは台場パイレーツの取締役――鮎川美里さん。視線を右に移すと神楽監督がフランス人のソムリエと何か談笑している。フランス語なのでさっぱり理解できない。
そのソムリエはバンダナに派手なゴシック調の衣装と、どこか中世ヨーロッパをイメージした衣装を着ている。彼に限らず他の店員も同じような格好をしており、内装自体も海賊のアジトをイメージしてか、剣や大砲、金銀財宝のレプリカが置かれている。
ただ料理の値段はとても海賊が食べるようなリーズナブルなものではなく、まさに一流レストラン並の値がする。今食べている伊勢エビのグラタンで一体東城高校の名物ピザパンがいくつ買えるか考えてみて、自分の貧相さを再確認させられた。
この展望レストラン『トルトゥーガ』はメインスタンド側の最上段にあり、バッグスタンド側より高く作られているため、バックスタンドの向こうに東京湾の夜景を望むことが出来る。
東京湾にはいくつもの屋形船が浮かび、色とりどりの光をともしそれが水面に反射して幻想的な雰囲気をかもしだす。そして遠くの東京の夜景と、レインボーブリッジの壮麗さ。まさにこれだけでチャージ料いくらかとられても納得できるなぁという夜景だ。
クールにしようとしても、あまりの素晴らしさに浮ついてしまう。どうしてもチラチラ窓の外に視線が流れてしまう。
鮎川美里さんはそんなぼくの様子に微笑を浮かべた。
「素敵なスタジアムでしょ」
少し挑発的に。まるで恋人に買ってもらったプレゼントを自慢するかのように、美里さんはスタジアムを手で示した。
ぼくはといえば、ただ素直に頷くしかなかった。
「ここでプレーしたいと思わない?」
一応質問という形はとっているものの、美里さんの言葉には否定を許さないという自信が感じられた。
産まれてきてからこれまで、一度として自分の意見に反対などされたことはない。常に世界の中心にいるかのような美里さん。
エリを立てたお洒落なシャツといい、銀縁の眼鏡といい、少し開いた胸元から覗くシックなペンダントといい、美里さんはいかにも仕事が出来ますというオーラをかもし出している。
「どうかしら?」
そして人を引き込んでしまう笑顔。モデルみたいに綺麗に切りそろえられた前髪。そして毎日手入れを欠かしていないきめ細やかな肌。絶対にどっかの誰かさんみたいに目の下にクマとか作ったりしないんだろうなぁ。
「こいつはあんまり乗り気じゃないみたいだぜ」
ボーッ、と美里さんに見とれていたら突然神楽監督が割りこんできた。
「あら? どうして?」
本当に理解できないという表情だ。他人の価値観なんて認めたことないんだろう。
「いや……どうして試合にも出てないぼくが選ばれたのかと思って」
「決まってるじゃない。ルックスがいいからよ」
あっさりと言い切られた。
もの凄く正しい事みたいに。
あまりの自信に、ぼくも一瞬納得しかけた。
「何か不満?」
「そんなのって……本当に正しいんですかね? だってあくまでプロスポーツだし。勝つためにいい選手をとるんじゃなくて、ルックス重視で選手をとるなんて……そういうやり方でファンは納得しますか?」
ぼくは救いをもとめて神楽監督を見る。しかし彼は静観を決め込んだようで、高そうなワインをグラスに注いでいる。
「久留須君はJの人気が低下していることは知っているでしょう?」
「ええまあ、よくサッカー雑誌とかでとりあげられてるし」
「このパイレーツが以前経営難だったことも知ってるかしら?」
「まあ、大体は……」
「あのままだったらチームはつぶれていたわ。それをわたし達が買い取ったの。いっとくけどこれはボランティアじゃないの。どっかのロシアオーナーみたいな道楽でもないわ。ビジネスなの。ビジネスである以上、わたし達も収益を見込んで買い取ったわけ。その上でチームを収益を上げるために様々な戦略をとることは当然でしょ。そこでわたし達はルックスのいい選手を集めて、新たなる客層――『十代女性層』というのに獲得することにしたのよ。その結果、平均入場者数が三千未満から一万二千台に上がった。これはJ1人気チーム程ではないけれど、J1レベルの集客力に匹敵するわ」
「でもサッカーと関係ないことでアピールしたって、その人気がつづくとは思えないんですけど」
美里さんはまるで小学生の意見を聞く女教師のように、優しく何度も、うんうんと頷いてみせる。
「でもね。そうとは言い切れないわ。例えば音楽業界にはアイドルってジャンルがあるでしょ。たしかにアイドルには歌もがんばっている人もいるわ。でも音楽以外での面が多くをしめるのは確かでしょ? それでもファンの中にはそんな歌を聴いて感動する子もいる。他にもマンガの世界だって、内容より絵の綺麗さで売れることもある」
「それとスポーツは別なんだと思いますけど」
「どうして? スポーツだけが特別なの? 音楽にだってマンガにだって、そういうものを否定する意見がないわけじゃないわ。それでも立派にひとつのジャンルとして確立し、収益を上げている。はっきり言うわ。パイレーツにどれだけ資金を注いでも優勝できるかどうかはわからないし、それで採算がとれる保証もないの。これはビジネスなの。わたし達だって遊びでやってるわけじゃないのよ。真剣にチームを存続させる上での処世術なのよ。そうしなければチーム自体が消滅しちゃうんだから」
ビジネス。
たしかにサッカーはもうビジネス的な要素が大きくなりすぎたといわれている。
だけど、どうしても割り切れない。
それよりも大事な物はあるはずなのに。
それを言葉に出来ない。
言いたいことが喉まで出かかっているのに、それを言葉として組み立てることがぼくにはできない。
ぼくは再び助けるように神楽監督を見た。彼ならそれを言葉にする術を知っていると思った。
だけど神楽監督は、まるで何の興味もないかのように、ただワインを味わっている。
そこにスーツを着た男がやって来て、何か美里さんに耳打ちした。
「ごめんなさい。ちょっとチーム用のフリーペーパーの打ち合わせがあって、食事の途中だけど失礼させてもらうわ」
そういわれて、ぼくは反論できなかったくやしさと同時に、この場から解放される安堵感を味わっていた。
「よかったらコンサート観ていってあげて。うちの選手がやっているバンドなの」
バンドって……サッカー選手が? しかもこんな本格的なコンサートまで開いて?
いくら宣伝とはいえ、やりすぎじゃないだろうか?
美里さんはあいかわらず上品でエレガントな身のこなしで立ち上がり、席を離れる。
ふと、何かを思い出したように立ち止まり、首だけ振り返ってぼくを見る。
その目はいままでの微笑とは違い、もっと幼く、まるでイタズラを思いついた子供のようだった。そんな目もすごく魅力的で、ぼくは少しドキッとした。
「あなたを選んだ理由を知りたいと言ったわね」
ぼくは頷く。
「目よ」
「目?」
「国立競技場で優勝が決まった瞬間――喜びに沸く選手達の中で、あなたが壁凪圭悟を見ていた目」
心がざわつく。
ぼくの触れられたくない部分に、美里さんは踏み込んできた。
「あの目を見た時、あなたと壁凪圭悟を戦わせてみたいと思ったのよ」
美里さんは心に踏み込んだのとは逆に、軽快な足取りでぼくから離れていった。
圭悟と同じピッチに立って戦う。
三年間、ぼくの前に大きな壁となって立ちはだかってきた親友と。
馬鹿げている。
勝てるわけがないじゃないか。
「相手は日本代表の次期エース候補だぞ。ぼくなんかが戦おうなんて、勘違いもいいとこだよ」
「お前は……」
神楽監督が久しぶりに口を開いた。あいかわらずワインを手にしたままだが。
「そうやっていつまでも壁凪の亡霊を怖れたまま生きていくつもりか?」
だって
それが現実なんですよ、監督。
ぼくはアイツに勝てない。
それなのに
それがわかっているのに
あなた達はアイツと戦うべきだというんですか?
負けるとわかっているのに
それでも戦えと?
そんなの愚か者のすることだ
そんなの……
2
高校選手権の後、圭悟はすぐにユースの合宿へと行ってしまった。
それから今までの間、圭悟に会ったのは一度だけ。
それはパイレーツから誘いの電話を受けた翌日。
プロにならないかとといわれたことで、少し興奮したのか早く目を覚ましてしまった。部活を引退していたこともあり、何だか受験勉強も手につかなかったので、ぼくは早朝ランニングへと繰り出した。
薄明るい空。
街中が淡いブルーに満たされている中、ぼくは白い息を吐き、走り出した。
いつもと同じようで、違った顔をみせる街並み。静謐が心地よく、まるで世界の全部を独り占めしているかのように感じる。
「おーい」
ぼくの世界に雑音が混じる。
誰かが誰かを呼んでいるようだ。
「おーい」
こんな朝早くからからうるさいなぁ。
ぼくは怪訝な表情で声の主の方を睨んだ。ママチャリに乗ったジャージ姿の男が、ぼくの遙か後方で手を振っている。
「おーい、三汰」
どうやらぼくを呼んでいるらしい。
近づくに連れて、それが壁凪圭悟であることがはっきりとした。
今や日本サッカー界の将来を担う天才司令塔が、近所のスーパーで買った安っぽいジャージを着てママチャリで走っているなど、誰が信じてくれるだろうか?
圭悟がブレーキレバーを引くと、古いママチャリは、ギギギギギッと錆びた音をたて、ぼくの数メートル先でやっと止った。こんな自転車に乗って、事故にでも遭ったら、ユースの監督やグランパスのフロントはどう思うだろう?
圭悟は「ふう」とため息をつき、振り返りぼくに笑顔を向ける。
「偶然だねー。三汰、いつもこんなところでランニングしてたんだ」
「たまたまだよ。受験勉強の気分転換」
「そうなんだ」
どうせお前には関係のない話だ。さして興味なんてないだろ? ほっといてくれ。
「じゃあさ、せっかくだし練習つきあってよ」
圭悟はママチャリの籠に入ったサッカーボールを指さす。
「練習って、俺じゃお前の練習相手なんかにゃならないだろ? ユース合宿で相当レベルの高い練習してる奴の相手なんて出来ねーよ」
「そんな大した事してないよー。練習なんてどこも大して変わらないって」
つまりぼくとお前の差は練習じゃなくて才能だって言いたいのか?
そうじゃない。
圭悟はそんなこと思う奴じゃない。
だから腹が立つ。
本人はそう思っていなくても、事実としてそれが示される。素人に出来ないことをやってのけた上で、それが誰でもちょっと努力すれば出来ると思いこんでいる。そしてその価値観を他人に強要する。
自分が簡単に出来たから、君も努力すればすぐ出来るよと。
そうやって才能の差を見せつけられることが、自慢されるよりも何倍も腹立たしい。
ぼくはずっとそう言えずに、曖昧に笑い「そうだよな」等と言って誤魔化してきた。
そして今回も何も言えずに、結局圭悟の練習につき合うことになった。
ぼくと圭悟が出会った河川敷。
あの頃とは大分変わり、ゴールもところどころ塗装が禿げてしまって、どこかもの悲しい。
そして知らない間に、まわりをネットが囲んでいた。きっと誰かがボールが外に出て行ってしまわないようにと取付けたのだろう。
ぼくがそのネットを見ていると、圭悟が声をかけてきた。
「そのネット一年くらい前に取付けられたんだよ。昔のぼくみたいにボールを川に落として拾いに行った小学生が溺れかけたんだって」
圭悟はママチャリの籠からボールを取り出しリフティングを始める。
「ふーん」
「三汰、全然ここに来てないんだね」
圭悟の声に寂しさのような物が滲む。
「おぼえてる? 高校に入った頃、一刻も早く二人でレギュラーを掴もうって、ここで早朝練習することを約束したの」
「……」
「ぼくがユースに選ばれて合宿にいって帰ってきたら、三汰はもういなかった」
「ひとりで練習してるのがバカバカしくなったんだよ。それだったらその分寝て、放課後にみんなと練習した方がいいからさ」
違う。
本当はくやしくて。
どんどん差をつけられるのが嫌で。
「そうなんだ」
「そうだよ」
「あれからぼくはずっと三汰を待ってたんだよ。来られる時はいつもここに来て、ひとりで練習してた……なんだ、そうだったのか、なんかぼく間抜けだなぁ……てっきり三汰に嫌われたんだと思ってた」
圭悟は二、三度ボールを頭でリフティングして、そのままぼくに向かって、ポーンと蹴り出してきた。
正確にぼくの蹴りやすい位置へと届くボール。
ボロボロになったボール。
三年前、二人で金を半分ずつ出して買ったボールだ。あの頃は新品だったのに。
ぼくはそのまま圭悟にボールを蹴り返す。
すこし心に戸惑いがあったせいかボールは圭悟の横を抜けてしまいそうだった。しかし圭悟は足をのばし、いとも簡単にボールをコントロールする。ボールは高く上がり、圭悟の目の前へと。そしてそのボールが落ちきらないうちにダイレクトでぼくへとパスする。
またぼくの蹴りやすい位置へ。
まいった。
たった一回のパス交換で、完全に差を見せつけられた。
ぼくはもう、苦笑いを浮かべるしかない。
それからしばらく無言のままパス交換が続いた。
どちらも投げかける言葉がない。
昔はこんな沈黙なんかあり得なかった。
どちらかが黙れば、どちらかがしゃべり出す。話題はつきることなく、何か話したりないものを抱えながら別れたものだ。
今は何をしゃべっていいのかもわからない。
「あのさ」
「え?」
圭悟が何か話しかけてくる。なんだ? 何を言うんだ?
変な緊張感が走る。
「ちょっと休憩しようか」
「……ああ」
朝日が照らす川面。
砂まみれのボール。
寒空の下で飲むポカリスエット。
遠くに聞こえる車の走りさる音。
橋の上を走っていく自転車に乗った中学生の女の子。
目の前をおじいさんが犬の散歩をしながら通り過ぎていく。
全ての物が世界の空白と、圭悟との間にある沈黙を埋めてくれる。
ぼくは深呼吸した。
冬の冷たい風が肺を冷やす。
草の匂いが心を穏やかにする。
圭悟が立ち上がりボールを蹴り出した。
軽やかにドリブルしていく圭悟。
さっきの犬がボールに絡んでいく、圭悟はまるでボールを生き物のように操り、犬とじゃれて遊ぶ。
ぼくはただ体育座りしながらその様子をながめていた。
圭悟と朝練していた昔に戻った気分がする。
あの希望に満ちていた頃に。
やがておじいさんの呼ぶ声がして犬は走り去っていく。
取り残された圭悟は少し寂しそうに手を振って犬に別れをつげる。
取り残された圭悟。
ずっと取り残されていた圭悟。
初めて圭悟にあった時も、彼はひとりで雨の中ボールを蹴っていた。
それからぼくと出会い。
ぼくに取り残され。
ひとりでここで練習をつづけていた。
ぼくは立ち上がり圭悟にパスを要求する。圭悟はすごく楽しそうな笑顔をみせ、ぼくに正確なパスをくれた。
ぼくはあえてそれを踵でコントロールして頭上に浮かせて、そのままヘディングで圭悟に返す。ディフェンスにプレッシャーを受けなければ、このぐらいのことはぼくだって出来る。
圭悟も応戦するようにそのボールを肩でトラップすると、そのまま右肩、頭、左肩とリフティングして、さいごは背中に落としたボールを蠍のような体勢になって踵でボールを蹴り、ぼくに返してくる。スコーピオンといわれる蹴り方だ。
背中に目でもついてるのかと思って、おもわずぼくは笑ってしまう。苦笑でも、自嘲気味な笑いでもなく、心から楽しんで。
圭悟のプレーは人を楽しませる。
全てが昔に戻ったような気がする。
「ねえ、三汰」
「あん?」
「グランパスのセレクション受けてみない?」
「へ?」
ぼくは思わずボールをトラップし損なう。ボールは転がり、ネットに当たって止った。
「監督に三汰の事を話したんだ。そしたら一度プレーを見てくれるって。一緒にグランパスのユニフォームが着られるかもしれないんだよ」
圭悟の言葉がぼくを過去から現在へと呼び戻す。
それは憐れみだろうか?
圭悟にはそんなつもりはないだろう。
ただ約束を果たそうとしているだけだ。一緒にグランパスのユニフォームを着るという。
だけどぼくにとっては
とても屈辱的だ。
「また同じピッチの上で三汰とプレーがしたいんだ」
「悪いけど……俺はプロになるつもりはないから」
「どうして?」
圭悟は驚きの表情を浮かべる。
きっとその話をすれば、ぼくが喜んで乗ってくると思っていたのだろう。
だけどぼくはそんな単純ではないし、憐れみに対して鈍感でもない。
何よりこれ以上、圭悟のおまけとして扱われるのは嫌だった。
高校選手権でベンチ入りできたのも、戦力としてではなく、圭悟がぼくがベンチにいるだけで安心できると言った理由からだ。
下級生に影で嘲られ。監督にため息を吐かれ。
ぼくはベンチに座るたびに、すごく居心地の悪い思いをしてきた。
きっと圭悟にはわからない。
この思いがわかるはずがない。
だからといって口にするつもりはない。
そんな事をしたら恥の上塗りだ。
「プロなんて不安定なものより、もっと堅実な道を選んだんだ。俺は一人っ子だし、将来は両親の面倒もみなきゃならないから。いつまでも夢にすがりついてるわけにはいかない。どっかで線を引かなきゃならないんだ」
3
圭悟と同じピッチに立つということ。
今度は敵として。
その時、ハーフラインの向こうで圭悟はどんな顔をするだろう?
喜ぶだろうか?
悲しむだろうか?
「あのー、監督」
ふいに背後から声がしてぼくは振り返る。
そこには二人の男が立っていた。どちらもぼくと同じくらいの歳だ。
一人はパーマ頭の小柄な男で、大きな目と中性的な顔立ちは天使を思わせる。
もう一人は長身で彫りの深い顔をしており、どこかモデルのような雰囲気をかもし出している。
「なんだ?」
神楽監督はつまらなさそうに二人を一瞥した。あいかわらずヤクザな雰囲気で、二人が萎縮してしまうのが見て取れた。
「はじめまして。今度パイレーツに加入します関東弘道と申します」
パーマの男がペコリと頭を下げた。
「同じく図師陽介です。よろしくお願いします」
長身の男が軽く会釈する。
神楽監督は、フン、とつまらなさそうに鼻で笑い。再びワインを口に含む。訪れる沈黙。関東が困ったような顔をしながら、思い切って口を開く。
「自分は長崎出身で地元のクラブチームで――」
「なんだ? ここで自己紹介するつもりか?」
神楽監督があからさまに不機嫌な声をあげる。関東は顔をひきつらせて答える。
「は、はい。そのつもりですけど」
「お前らのプレースタイルだとかデータはもう調べてあるんだ。ンナ事に手間とらせんな。こんなとこで自己アピールしてる暇があったら、どっかで自主練でもして、今度プレーで実力を証明してみろってんだ」
「あ、はい。すいません」
ふたりは慌てて頭をさげる。
そして再び黙り込んでしまった神楽監督に、どう声をかけたらいいかわからず、「失礼しました」といって立ち去ろうとする。
「あ、ちょっと待て」
ふたりの顔が強ばる。きっとまた何か怒られると思っただろう。ぼくもそう思った。
「ちょうどいいや。お前ら今日のホテルの場所知ってるんだろ?」
「え……あ、はい」
「俺はこれから下で妻に頼まれた買い物をして帰らにゃならん。それで誰かに頼もうと思ってたんだが、お前らでいいや。コイツをホテルまで案内してやってくれ」
神楽監督がぼくを指さす。二人の視線がぼくに注がれる。いかにも誰だコイツ? といった表情だ。それに対して神楽監督が答える。
「こいつは東城高校の久留須三汰。もしかしたらお前らのチームメイトになるかもしれん奴だ」
ふたりのぼくを見る目に驚きがまじる。
「じゃ、そういうわけで俺はこれで退散させてもらう。つぎは入団会見の席でな」
神楽監督がぼくに意地の悪い笑みを向ける。
それはつまり、ぼくが入団するということだ。
神楽監督はそう確信している。
そしてそのままアルマーニのジャケットを肩にかけて店を出て行った。
ふたりはそれを見送ると、興味津々にぼくを取り囲んだ。
「東城高校ってあの高校選手権で優勝した?」
長身の図師が上から話しかけてくると威圧感を感じる。
「そうだけど」
「へー、ぼく福岡清明でプレーしてたんだけど覚えてる? 右サイドでプレーしてたんだけど」
なんかでかい選手がいたのは何となく覚えている。だが、福岡清明で覚えているのは、さらに背の高いユース代表のフォワード十河大作だ。たしか公式パンフレットには195センチと載っていた。彼がいなければうちはもっと楽に勝てただろう。
「ねえねえアンタ、サッカー選手で好きなの誰? 俺はフィーゴなんだけど」
関東がしゃがみ込んでぼくと目線を合わせる。まるで子供のようだ。
「別にいない」
本当はストイコビッチだけど、いろいろ聞かれると面倒なのでウソをついた。
「誰かのプレーをマネするより、己を磨くか。さすが壁凪圭悟のチームメイト! かっこいい」
図師が感心した声をあげる。
圭悟は関係ないだろ? 東城高校だからって何でも圭悟に結びつけるなよ。
「アンタらわかってないよー。どんな選手もスターに憧れてサッカー始めたんだよー」
関東がパーマ頭を左右に振る。シャンプーの匂いがした。
「いや、俺はなんかサッカーが流行ってて女にもてそうだから。どんなスポーツでもそこそこ出来たし、うちサッカー部強かったし」
図師がつまんないこというなよ、と肩を竦める。
「ヘコー。そんなんでプロになれるなんて甘いね。甘いよ! あんたら!」
いや、俺は別にそんな事いってないし。一緒にされても困る。
「まあまあ、そんな事は後で語ろうよ。今日はぼくらの親睦会ってことで……ちょうど良かったよ。一人足りないなぁーって思ってたんだ」
「は?」
「いいよー。君たちー」
図師が店の入り口に向かって手招きする。すると三人組の女の子達がみせに入ってきた。
「なんか今日パイレーツのチアガールのオーディションがあったらしくてさ。その合格者たちと偶然会って、これからのパイレーツの担う者同士で親睦を深め合おうよって話になったんだ。で、向こうが三人だったから君が入ってくれるとちょうどいいんだよね」
どこかで見覚えがある女の子達だと思った。
たしか三人のうち二人はトイレの入り口ですれ違った子達だ。雫奈緒のパスを捨てた子達。
「もう監督との話は終わったんですかー?」
さすがに合格者だけあって、みんな質が高い。
「この人が監督?」
垂れ目の女の子がぼくをみる。トイレですれ違った事はまったく覚えていないようだ。多分眼中になかったのだろう。
「違う違う。彼も新加入の選手なの」
そうじゃない。
そうじゃないけど、説明するのも面倒なので放っておいた。代わりに女の子達に質問する。
「あと他にどんな子が合格した?」
「え? 今回合格したのはこの三人だけですけど」
垂れ目の子が首をかしげる。いかにも可愛さをアピールしたわざとらしい仕草だ。
たしかアカネとか呼ばれていたっけ? もう一人アカネの後ろに付き人のようにしてついているのがミホ。後の一人はあまり仲がよいわけではないらしく、少し離れたところに立っている。
三人だけ。
つまり奈緒は落ちたわけだ。
なんだか少し落胆してしまった自分に驚く。
心のどこかで合格して欲しいと思っていたんだろうか?
だけどドラマのように嫌がらせされた子が受かるわけでもない。それが現実だ。
「それじゃあ行きますか」
図師が慣れた手つきでアカネの肩に触れる。
断ろうと思ったけど。
ホテルの場所を自分で調べるのも面倒だし、どうせホテルに行っても時間を持てあますだけなので。
とりあえずぼくは親睦会に参加する事にした。
決して、女の子達がかわいいからじゃない。
断じてそうじゃない。
多分……。
お酒はあまり得意じゃない。
そもそも未成年だし。
そもそも高校選手権に出場してた選手だし。
だけど飲んだことがないかというと――そうでもない。
田舎にいった時にじいちゃんに「酒も呑めんで男といえるか!」と無理矢理飲まされた。やたらキツイ焼酎は、ぼくのその後の記憶を奪った。目覚めると何故か家の外の田んぼに寝転がっていた。スイカを抱いて。
クラスメイトと忘年会で飲んだ時も、ひとり酔いつぶれて、目を覚ましたらひとりきりだった。全員分の伝票が目の前に置かれていた。
「ねえねえ、君たちサッカー選手で誰が好き? 俺はフィーゴなんだけど」
ヤニさがる関東。
「あたしは断然ベッカム様!」
「カカかなぁ……あ、増島も好きです」
「……ガットゥーゾ」
アカネ、ミホ――と自己紹介ではエリカと名乗っていた子の順で。
「あ、俺は小学生の頃、清海町のベッカムって呼ばれてたよ」
「えー、ウソだぁ」
どさくさに紛れてアカネちゃんの肩に触れる図師。鼻の下が伸びている。
「ホント、ホント。やばいくらいフリーキックが上手くてさぁ」
「あ、なんだフリーキックの話ですかぁ」
「あー何それ! 顔は全然違うってことー?」
また触った。
このダイニングバーに来てからもう二十回近くは触っている。
というより。
なんかついてけない……。
あんまこういう席は慣れてないし。会話に割りこむタイミングも、どんなことを話したらいいかも、さっぱりわからん。
帰ろう。
「ねー、関東君」
関東は振り返る。ぼくはフワフワしたパーマの間から突き出た耳に小声で呟く。女の子達は図師の話に夢中のようだ。
「ちょっと明日朝早いから先に帰るよ。ホテルの場所教えて」
「ああ、いいよ。ちょっと待って」
関東から六折り紙ナフキンに書いてもらった地図を受け取り、代わりに二千円ほど払った。全然飲んでないので二千円でもおつりがくるくらいだろう。
それでもすっかり酔ったらしく、バーの外に出ると、風がひどく冷たく感じられた。
風邪ひかないうちにさっさと帰ろう。
「久留須さん!」
帰路につこうとした瞬間、うしろから呼び止められる。そこには取るものとって慌てて出てきたアカネちゃんが息を切らして立っていた。
「もう帰っちゃうんですか?」
「うん、明日朝から用があって」
別に何もないけど。
「わたしこの近くにおいしいラーメン屋さんがあるの知ってるんですけど。よかったら寄ってきません? ちょっと酔いさましに」
「だったら俺より他のみんなと行ったら?」
その方が盛り上がるっしょ。
「もう少し久留須さんと話したいんですよ」
なんだか変なことになってきた。
いやまあ、今までまったくこういう事がなかったわけじゃないんだけど。高校選手権にも出れば、否応なしにモテたし。
だけど、いつもおきまりのパターンは。
「いろいろ壁凪選手の話とか興味あるし」
すごい笑顔。
まったく悪びれた様子もない。
そう、いつだって圭悟のおさがり。それか圭悟の幼なじみっていうのがぼくの価値。
恋愛に関しても、俺は圭悟の影。
「悪い。ラーメン嫌いなんだ」
近所のラーメン屋に週一で通うくらいね。
「あ、そうなんですか……じゃあ、ホテルまで送りますよ。わたしこの辺くわしいし。ちょっと近道とか知ってるんですよ」
ああ、面倒だなぁ。
すげー可愛い子なんだけど。
もう圭悟の名前を出した以上、ぼくの恋愛対象外。今までつき合ったことがあるのは、サッカーのサの字もしらない子だけ。
それが災いしてか、いつも最後の言葉は「わたしとサッカー部どっちが大事なの?」だった。
「じゃあ行きましょうか。歩きながらいろいろ話してくださいよ」
すごい強制的。
言葉は丁寧だけど、どこか命令しているようだ。
美里さんに似てるなぁ。美里さんはそこに上流階級特有のエレガントさを感じたけど。アカネちゃんの場合は、ただわがままっぽい。
それでもホテルまでの我慢だと思ったけど。
こういうタイミングで見つけてしまうのは、なんとなく運命を感じてしまうなぁ。
「ごめん。みんなのところに戻ってて。ちょっと急用思い出した」
走り出すぼくの背中に「え?」というアカネちゃんの声がかかる。だけどもう立ち止まるつもりはない。
まったく
タイミングがいいのか
悪いのか
なんなんだろう
4
「なんなんだろうな。このタイミングは」
ぼくのあきれた視線の先――舗道の脇に備え付けられたベンチ。その上で眠っている雫奈緒。
東京のお台場で、偶然に三度も会ってしまうのは、どれだけの確率なのだろう? すくなくとも校内で元カノにバッタリ出くわす可能性よりは、遥かに低いだろう。
スポーツバックを枕代わりに寝言の呟いている。断片的にだが「お父さん」と聞こえる。ファザコンなのだろうか?
こんな所で年頃の女の子が寝てるなんて。無防備もいいところだ。
あ、ケツかいた。
なんだかなぁ。
いい加減起こしてやるか。
「……お父さん……どこいったの……お父さん」
伸ばした手の先、奈緒の瞳から涙がこぼれ落ちる。ぼくはそのまま伸ばした手を引っ込める。
「……会いたいよぉ……」
……まいったな。
とりあえず近くの自販機でホットレモンを買って、ベンチの隅に腰掛ける。
ひどく冷えるなぁ。
やれやれ。
ぼくはジャケットを脱いで奈緒にかけてやる。
ずずずずず……
ああ、ホットレモンが体にしみるぜ。
あ、笑った。
お父さんに会えたのかな?
てか、なんか食ってるし。
う、眉間にしわ寄せてる。
ああ、なんかマズイもの食ったんだ。
もう一本ホットドリンク買ってこよう。
なんか自販機の側をガラの悪そうな連中が通り過ぎてった。完全に酔っぱらってる。
はー、ますますこんな所に放っておけないじゃないか。
どっかりとベンチに腰降ろすと、微かに揺れた。
あ、起きちゃう?
しかし奈緒はなんかニヤニヤ笑ってる。そして聞き取れない声で何か言ってる。
やっぱりお父さんに会えたんだろうなぁ。
今は再会のシーンってところかな。
ああ、東京の冬は寒いなぁ。
もうすぐ三月だってのに。
受験も近いのに。
風邪ひいちゃうかなぁ、ぼく。
ひどい寒さの中、目を覚ますと、白い空がやたら頭をくらくらさせた。
たった二杯のカクテルで二日酔いか、風邪をひいたのか。
首筋がやたら熱い。焼けるように熱い。というより――
「あちぃぃぃぃぃ!」
あまりの熱さに飛び起きるぼく。
「あ、おはようございますです」
ベンチの横には熱々のコーヒー缶を手にした奈緒が座っている。おそらくあのコーヒー缶が熱さの原因だろう。いまだにヒリヒリする。
ぼくがコーヒー缶を睨むと、奈緒は微笑み。
「ああ、寒そうだったので暖めたのです。飲みます?」
と、コーヒー缶を差しだしてきた。
ぼくはため息をつきながらそれを受け取り、ゆっくりと口に含んだ。
奈緒はといえば、すっかりぼくのジャケットを上から羽織り、完全に自分のものにしている。裾が長いため、すっぽり手の先まで覆い、それがコーヒー缶の熱さを和らげていたのだろう。直に触っていれば、それがどんだけ熱いもので、それを首筋にあてられたらどれだけ驚くかすぐに気づけただろうに。
はぁぁ、でもいけるなぁ、このコーヒー。
「ボディガードご苦労様だったのです」
奈緒はいきなりきまじめな顔をして敬礼する。
「どういたしまして」
東京行って女の子と一晩明かしたと言ったら、うちの親はどんな顔するだろう? 言葉にするとなんだかすごく大人っぽいけど、実際にはロマンスの欠片もない。
うう、腰痛てぇ。
腕にベンチの跡がしっかりついちゃってるし。
奈緒は、じっとぼくの様子をみている。
口を「う」の字にして、まん丸な目でずっと。すげー、ボサボサな髪だなぁ。まあぼくも同じようなもんだろうけど。
しかしいつ瞬きするんだ?
いつまで見てるんだ?
気まずいなぁ。
なんか話さないと。
「そういやマーメイドのオーディションどうだった?」
うう、意地悪だなぁ。落ちたの知ってるクセに。
「ダメでしたです」
「そう、残念だね」
そんなに落ち込んだ様子でもない。別にどうしてもなりたいってわけじゃなかったのかな?
「なんでパイレーツなんかのチアになろうと思ったの?」
「好きなのです」
「パイレーツが?」
奈緒はコクンと頷く。
「こんなJのお荷物みたいなチームが? どこが好きなのさ?」
「お父さんのチームだからです」
お父さん。
そう寝言で呟きながら、奈緒が流した涙。
「まさかお父さんはシュンポシュタシオン社の社長とか?」
それじゃあ美里さんの妹? しかし奈緒は首を横に振って否定した。
「まさか神楽監督の?」
「誰なのです?」
知らないんだ。
ファンなのに。
まあ、知名度的にはそんなもんなのかなぁ。あの監督。一目見たら忘れないだろうけど。
「お父さんは昔パイレーツの――パイレーツがシーメンズ月島だった頃の選手なのです。すごい天才的なプレーヤーだったのです。将来は日本代表の十番を背負うと言われていたのです」
圭悟みたいなもんかな。
でも雫なんて珍しい名字の選手知らないなぁ。
「Jリーグが出来た時にいろいろなチームから誘われたのです。でもお父さんは地元の清川工業サッカー部をJに押し上げることを選んだのです。自分達の力でJリーグ入りするって」
だから代表から遠ざかったのか。やっぱりJリーグでやるのと、アマチュアのチームでやるのとでは違うだろう。
それで有名になる前に消えたのか。
「念願かなってJFLにシーメンズ月島として加盟することが出来たのです。それでこれからって時に、膝を怪我しちゃったのです」
「Jリーグ入りも近いと思ってがんばりすぎたのかな」
ぼくの言葉に、奈緒は悲しそうな瞳をする。今にも泣きそうだ。
「わたしが五歳の時に、階段から落ちそうになったわたしを庇って怪我したのです」
「……」
「それから一年半かけてリハビリして復帰したのです。でも昔みたいなプレーは出来ずに、クラブに引退を勧められたのです。それで荒れちゃったのです。そして交通事故を……を起こ……起こし……」
奈緒の頬からボロボロ涙がこぼれ落ちる。
「うっく……起こして……同じ所怪我して……んっく……ダ、ダメに」
「もう、いいから……話さなくて」
抱きしめてあげたいけど。
そうもいかず。
ただ頭を撫でてあげるしかできない自分がもどかしい。
奈緒はひとしきり涙を流すと、深く深呼吸して、呼吸を整えた。
「……事故の時、一緒にのってたお母さんが死んじゃったのです。それでお母さんのお父さん――おじいちゃんが怒って、お父さんと絶縁しちゃったのです。それからわたしはおじいちゃんちに引き取られて、お父さんとは会ってないのです」
「うん」
「お父さんが残してくれたのは、このパイレーツだけなのです」
遠く聳える台場ブルーパーク。
奈緒は涙に濡れた小さな手で、それを指さす。
「お父さんの夢――パイレーツのJ1入り。わたしはその夢を叶えるために、少しでも協力したいのです」
もう涙は流さず。
奈緒はせいいっぱいの笑顔を浮かべた。
父親が代表入りの名誉を蹴ってまで、賭けようとした夢。
そして奈緒は、それを奪うキッカケを作ってしまった自分自身をずっと苛んでいる。
ぼくはいままでパイレーツを、美里さんのビジネスの道具としてしか見ていなかった。
だけどこのチームにも、人生をかけた人がいて、その想いを継いだ子がいて、チームに愛を注いでいる。
パイレーツのユニフォームを着るということは、そういう想いを背負うということ。
ぼくにそんなことができるだろうか?
こんな強い想いを背負うことが。
「もうマーメイド入りはあきらめるの?」
もうあきらめるの?
圭悟との約束を
あの豊田スタジアムのピッチに立つことを
「あきらめないです。まだ出来ることがあるのに、ここであきらめたら、きっと一生引きずるのです。あの時、あきらめなかったらきっと人生は変わってたと思うようになるのです。きっと何かつまずくたびに、それを言い訳にしちゃうのです。あの時あきらめなければ人生は変わってた」
きっとそうだろう。
これから先、人生につまづくたびに。
ぼくは言うだろう。
あの時、あきらめずにJリーガーになっていればと。
夢を言い訳にして生きていくだろう。
そして全てを妥協するようになる。
台場ブルーパーク。
通称『海賊船』。
果てしない航海に出るか。
果てしない後悔を引きずるか。
白い空の向こうで、海賊船が汽笛を上げた気がした。
長い長い航海に向けて。
「じゃあ、君を待ってるよ」
「はい?」
奈緒は何事かわからないといった目でぼくを見る。
説明なんかしないよ。
だっていつかわかることだから。
「あの上で君を待ってるから」
きっとぼくらはもう一度あえる。
約束はいらない。
そしてぼくは
台場パイレーツの
ユニフォームを纏うことを決めた
長い航海へ
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